沖縄の伝統文化や歴史を伝えるために、語り部バスガイドという新しい事業形態を生み出した。てぃーだ観光株式会社・崎原取締役の起業エピソード

「沖縄の経営者特集!」第136弾。今回は糸満市にある観光バス事業者、てぃーだ観光株式会社の崎原真弓取締役をご紹介します。
ありきたりなマニュアルガイドではなく、沖縄の心を伝える語り部として、バスガイド等の観光事業を行っている、てぃーだ観光株式会社。
観光バス車内での三線演奏や沖縄戦の悲惨さを「おばぁ」の独り語りで演じてみせるなど独自スタイルを確立した崎原取締役へ、どのようなきっかけや想いでこの事業を始められたのかを伺ってきました。
NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀」に出演。すべてのお客様を満足させられる語り部に

取材班:まずは起業されたきっかけからお伺いしてもよろしいでしょうか。
崎原取締役:私は元々、長い間バス会社のフリーガイドとして、沖縄の伝統文化を伝える語り部をしていました。
沖縄に旅行で来られるお客様へ、沖縄の伝統文化についてお伝えしたいという一心で働いていると、さまざまな方から高い評価をいただいたんですよ。
有難いことに、たくさんのお仕事も舞い込んできました。
ただ、依頼されたお仕事すべてを自分1人だけでは全うできないと思ったんです。そこで、語り部を育てながら、地道に活動を広げることにしました。
取材班:崎原取締役のような語り部が必要だったのですね。
崎原取締役:そんなある時、「自分自身の軸を安定させるには、拠点が必要なのではないか」ということに気が付いて。その方が、語り部たちの育成も思う存分できますし。
沖縄の伝統文化について伝えたいことを、もっと確実にお客様のもとへ届けられると思いました。
その中で、自身の経済面もそうですが、子育てをしている最中だったこともあり、懸念点はいろいろ思い浮かんではいたんですけど…。
「このまま、バス会社に所属しながら活動した方が安定して良いのでは?」と考えたり。
でも、自身の夢を叶えるためにも、沖縄で会社を作ると決意したんです。
取材班:沖縄で会社を立ち上げると決意された、きっかけは何だったのでしょうか。
崎原取締役:実は私、一度「プロフェッショナル~仕事の流儀」に出演させていただいたんです。今考えると、それが大きなきっかけだったかもしれません。
私自身、元々何か組織を作りたいとは思っていたんですけど、会社を作る資金は一切ありませんでした。
ちょうど、何か良い活動方法はないかなと模索していた時に「プロフェッショナル~仕事の流儀」の取材が入って。取材を終えると、関係者の方たちから「崎原さん、これから忙しくなりますよ」って声をかけていただきました。
そこで、「この取材を機に、これからたくさんのお客様が来られるんだ。このままじゃダメだ。もっともっと手を打っておかないと!」という思いになって(笑)
お客様を必ず満足させられるようにしないといけない。そう思って、50歳の時に起業を決意しました。
取材班:すごいです!「プロフェッショナル~仕事の流儀」で一躍有名になられたのですね。質問ですが、どうして観光業ではなくバス会社を立ち上げたのですか?
崎原取締役:会社を起こすことは簡単ではありません。起業を成功させるためには、これまで何をしてきたかがとても重要になるんです。
どのバスに乗っても、同じようなパフォーマンスができなくてはいけないですし、沖縄戦の独り語りに関しては23分という短い時間の中でシナリオを構成する必要があるんですよ。
予定時間よりも早く目的地に到着してしまうと、説明不足でお客様を満足させることができないかもしれない。
だからといって、すべてのバス運転手さんに「23分で調整してください」と相談するのは難しい。道路の交通量に左右される場合もありますしね。
運行の都度、担当する運転手さんが異なれば更に調整が難しくなります。かと言って毎回この運転手さんでというのも物理的に難しい。運転手さんの性格や運転の仕方の把握、「阿吽の呼吸」というか、その辺りの連動を大切にしたいと思っていました。それに手元のタブレットを操作しながらBGMを流したり、車内空間の雰囲気づくりにもこだわりがありますので、バスの装備品や機材が統一されていることで生きてくる演出があります。私の「届けたい想い」がお客様に届くためのベストな選択として、観光会社ではなくバス会社を立ち上げました。
取材班:なるほど、そういった背景があったのですね。全てはお客様に沖縄の魅力を余すことなく伝えるためなのですね。
繁忙期と閑散期の差が大きい
取材班:崎原取締役が起業されてから、大変だった出来事を教えていただけますか?
崎原取締役:沖縄本島の観光バス需要に関しては時期により大きな差があります。7月と8月に関しては、県外からの観光客はレンタカーを利用するファミリー層や個人的な旅行を楽しむ層といったところががを中心となってきます。観光バスを貸し切って旅行する県外からの団体旅行の来県数はごく少数です。
取材班:そうなのですか(驚)意外です!
崎原取締役:貸切バスの需要が落ちる閑散期に運転手さんやバスガイドさんたちのモチベーションを如何に維持するかは大変重要なことだと感じています。現在もコロナ禍で仕事がほぼゼロになってしまい、乗務しないことが当たり前になってしまうと乗務員としての運転や接客面でのスキルや感覚を維持していくことも難しくなってしまいます。スポーツ選手でいうと試合勘が鈍るという状態でしょうか?
取材班:私はてっきり、7月、8月は忙しいのかと思っていました。これからも大きな課題になっていきそうですね…。
「型破りのバスガイド」お客様と心を1つにできる語りを
取材班:てぃーだ観光株式会社様のアピールポイントをお伺いしてもよろしいでしょうか。
崎原取締役:いろいろなお客様から、私たちは普通のバスガイドではなくて「型破りなバスガイド」と呼ばれます。
観光バスの車内で、バスガイドがいきなり三線を弾くなんて、あまり聞かないじゃないですか(笑)そもそも、語り部ガイドという存在自体が珍しいことですから。
取材班:確かに、珍しいかもしれません(笑)
崎原取締役:普通のバスガイドさんは、窓の外に対象物が見えてきたら、それに関する歴史や文化について語るものですよね。道中ずっとこういう感じで進んでいくと思うんです。
でも私の場合は、自分の中で伝えたいことを大事にしていて。この場所に着くまでに何分間かかるから、そこで自分の伝えたいことをしっかり話すためにシナリオを作るんですよ。
普通のバスガイドさんだと、台本を覚えてキッチリするスタイルをとっている場合がほとんどですが、私の場合は、マニュアルガイドよりもストーリーを重視しています。
窓の外よりも、自分たちをたくさん見てもらえるように。お客様に一方通行で話すのではなく、心を1つにすることを大切にしています。
取材班:素敵ですね。その方が心にすっと入っていく気がしますね。

リモートやオンラインを使った新しいバスガイドの形
取材班:崎原取締役が持つ今後のビジョンについてお伺いしたいです。
崎原取締役:実は、毎年6月に20本ぐらいやっていた平和講演会が、コロナの影響でなくなってしまったんです。
そこから丸1年経ちましたが、現状はほとんど変わっていないですよね。そんなニューノーマルな世界の中で、どうやって活動の幅を広げていくかはずっと考えてます。
ただ、コロナの流行は決してデメリットだけではなくて、リモートやオンラインといった今まで知らなかった分野を学ぶこともできました。
これからはリモートやオンラインを活用しながら、目には見えない先人たちの肝人(ちむぐくる)をもっと多くの皆様に伝えていきたいですね。
取材班:なるほど。コロナが流行したからこそ得た、新しい事業の形ですね。
崎原取締役:実際、去年の10月に映像による語りをやってみたんですよ。すると、多くのお客様から好評をいただきました。
映像だからこそ、よりリアルに表情も気持ちも伝わるようになったのかもしれません。
今まではバスに乗らないとなかなか伝えられなかったお客様にも、こうして映像を駆使すると、もっと共感していただけると思っています。
取材班:映像ならバスの車内だけではなくて、色々なところでちむぐくるを広められそうですね!
崎原取締役:あとは、育成にも力を入れていかないとですね。
実は今、私の活動を聞いて何人か新しいバスガイドとして働きたいと声をかけてくれた方がいるんです。
これほどの魅力ある観光地として知れる沖縄において、バスガイドは観光で訪れる方々の旅の満足度を高めるという点でとても大きな役割を担っていると思います。しかし残念なことに、高齢化が進む一方で次世代の担い手が不足しています。
なので、今私の元に来てくれている方たちに、私の持つ理念ややりたいことを継承したいと思っています。
これからも沖縄のちむぐくるを伝えられるように、すべてを受け継いでいきたいですね。
取材班:バスガイドさんって、沖縄では深刻な人手不足に陥っているのですね。
崎原取締役の素晴らしい理念、これからも人々に伝えられるように私も精一杯応援していきます!

周りの人たちからの信頼を大切にして育んでいってほしい
取材班:最後に起業したい方へ向けてメッセージをお願いします。
崎原取締役:夢というのは、いくつになっても大切な事だと思います。夢を叶えるためには、もちろん情熱を常に持ち続ける必要がありますし。
でも、どれだけ情熱があっても1人で夢を実現するのは難しい。なので、「周りの人たちからの信頼を大切にして育んでいってほしい」です。
取材班:周囲の人たちの協力は、どんな場面でも力になりますしね!
崎原取締役:あとは、沖縄で起業するなら沖縄の歴史や文化をもっと学んでほしいです。そうすれば、沖縄の人たちと信頼関係を築きやすくなると思います。
実際に、先人たちが外交をそうやって成功させていますよね。琉球の貿易は、周囲の人たちとの信頼関係がなければ成功しなかったと思っています。
沖縄の歴史や文化を大切にすることで、きっと夢が実現するはずですよ。
取材班:なるほど。沖縄の歴史や文化を学べば、きっと先人たちのように輝かしい未来が作り出せる…。すごく勉強になるお話ですね!
本日はインタビューで伺いましたが、良いお話をたくさんお聞きすることができました!崎原取締役、貴重なお話をありがとうございました。
てぃーだ観光株式会社の事業所情報はこちら
語り部という新しいバスガイドのスタイルを駆使して、ちむぐくるを肌で体感できる希少な沖縄旅を提供しているてぃーだ観光株式会社。
「周りの人たちからの信頼を大切にして育んでいってほしい」と語る崎原取締役の姿を見て、起業への思い以前に一番大切にしないといけないことを改めて知ることができました。
優しい口調が特徴的な崎原取締役が代表を務める、てぃーだ観光株式会社の事業所情報は下記よりご確認いただけます。
| 事業所名 | てぃーだ観光株式会社 |
| アクセス | |
| 住所 | 〒901-0306 沖縄県糸満市西崎町5-14-11 |
| 電話番号 | 098-840-8787 |
| 公式HP | https://tiida-kanko.com/about/ |
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